「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」60点(100点満点中)
監督:パトリック・ヒューズ 出演:シルヴェスター・スタローン ジェイソン・ステイサム

高級品の使い捨て

使い捨て傭兵の映画に、往年のアクションスターを集めて次々と出演・再生させる。企画自体が自虐的ジョークのようなエクスペンダブルズシリーズだが、今回も質量たっぷり。カリフォルニアのボディビルジム近くの食堂のような大盤振る舞いになっている。

傭兵集団エクスペンダブルズを率いるバーニー(シルヴェスター・スタローン)は、CIAのドラマー(ハリソン・フォード)から新たな依頼を受ける。それはかつての仲間ながら自らの手で倒したはずのストーンバンクス(メル・ギブソン)を拘束しろというもの。多数の犠牲を避けられないと予測したバーニーは、あえてチームを解散して彼らを遠ざけようとするが……。

お皿に載りきれないほどのアクションと筋肉量で、もはやストーリーなんていらないよ、てな声が聞こえてきそうな第3作。確かにひたすらアクションと爆発を見せてくれればいい気もするが、ちゃんと各出演者のファン歓喜の見せ場は細やかに用意されている。

たとえばウェズリー・スナイプスなどは、たしか出所して2作目かと思うが、今回は刑務所ネタでいじられまくる。そもそも彼が演じる男が脱獄する展開だけでも爆笑なのに、刑務所に入った理由を語るところであんなことをいわせるとは、スタローンの悪乗りにもほどがある。

こうした遊び心はアクションシーンにもふんだんに取り入れられている。単なるCIAのお使い役と思いきや、ハリソン・フォードはちゃんと操縦するし、 アントニオ・バンデラス は二丁拳銃をぶっ放す。

誰に何をさせれば観客が喜ぶか、もはやこの映画の作り手はそれしか考えていない。まれにみるサービス定食といえる。

それぞれのスターたちも、それを理解した上で演じているように見える。ポスターが楽しげな笑顔で埋め尽くされているあたりも、そんなコンセプトが見え隠れする。

とりわけ心に残る見せ場があるわけではないが、それでもこの、観客への奉仕の心には頭が下がる思いだ。これもある種のプロ意識の塊のような仕事である。

寅さんシリーズのマドンナのように次々とオールドスターたちが登場するこのシリーズだが、そろそろマッチョ枠は飽和気味。今回もハッキングなど、特殊技能をもつキャラクターのほうがよく目立っていた。

さらなる続編ではそのあたりをふまえ、ヴィン・ディーゼルやデヴィッド・ハッセルホフに運転をさせるとか、ちょいとひねった方面から新旧スターを連れてきてほしい。スタローン家のご意見箱にそんな投稿をしたい今日この頃である。



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